水無月十四日 早朝の山の辺の道です。
一晩降り続いた雨が上がり、
神体山の三輪山につながる山の辺の山々には、靄がかかっています。
いつもは聞こえる鳥のさえずりもなく、無音に近い状態の中、
水田は鏡面のように山並みを映し出し、古人との時間を越えたつながりを感じます。
円座を製作しました。 直径2尺1寸(約64㎝)の渦巻きです。
先日も、円座職人の親方と話す機会があり、
寸法違いの編み難さの話題になりました。
円座は、分業で仕上げるのではなく、一人の職人が自分の感覚のみで編み上げて完成させます。
同寸法同仕様のものを編み続ければ、編む感覚が一定化してスムーズに編み上げることができます。
しかし、手馴れた寸法から直径が1寸でも変わると、
手に取る草の分量と、編み込む指の感覚を変えて調整しなければならず、
数十年のベテラン職人でさえも一部の者しか対応できません。
そのような話を聞いて、仕上がった円座を見直すと、
製作の苦労を微塵も感じさせない綺麗に編み上げられた円座に、プロの職人の意気を感じます。